アカウントさえあれば、誰でも動画を投稿できるYouTube。時代の波に乗ろうと、新規参入者は年々増加の傾向にあります。
しかし企業の場合、YouTubeへの挑戦は人件費や外注費のかかる事業。失敗のリスクを低減するための事前調査は欠かせません。
今回は、YouTubeチャンネルの準備から動画を投稿、チャンネルを伸ばしていくためのコツや基礎知識をまとめて整理、解説します。
YouTubeチャンネルの方向性・方針を定める
YouTubeチャンネルを立ち上げる際に最初にすべきことは、「どんな動画を投稿するか」といった「チャンネルの方向性」を定めること。
そして、どれくらいの予算・どれくらいのペースで作れるかという現実的な数字を出すことも必要です。
動画のコンセプトを決める
人気のある企業アカウントの特徴は「どんなチャンネルかわかりやすい」ことです。
雑多な動画を配信するチャンネルは、視聴者がどんなチャンネルかを認知するのが難しいですし、「好みの動画もあるが、興味のない動画も多い」ということにもなりやすいので、チャンネル登録者数が増えづらいのです。
登録者数を増やすにははっきりとしたコンセプトを定めるのが定石です。
美容院なら「髪」、飲食店なら「料理」など、企業やお店であればテーマはある程度は決まっていることが多いでしょう。
でも、もう少し掘り下げる必要があります。
例えば「コンセプトは髪!」として、ヘアアレンジ・セルフカット・ヘアケア商品レビュー・ドライヤーレビュー・カットモデルのビフォーアフターなどを全部詰め込むと、視聴者からすると「雑多」ということになってしまうのです。
YouTubeには無数の同業者がいます。「ちょっと尖りすぎては…?」と思うくらいにコンセプトとターゲットを絞り込むのがポイントです。
担当者を決める
YouTubeチャンネルを運営するには、「企画考案」「撮影」「動画編集」「投稿」「分析」といった多くの作業が発生します。視聴者との交流を深める方針なら、コメントの確認やコメントへの返信も必要です。
発信する動画のコンセプトが決まったら、作業を具体的に洗い出し、それを実行する担当者を決めましょう。
全体管理をするディレクター
本気でチャンネル運営するには、企画考案から投稿までのタスクとクオリティを管理する「ディレクター」が最低1人は必要です。
ディレクションできる人材がいないのであれば、運用代行会社に相談するという選択肢もあります。
立ち上げ期のみサポートしてくれる会社、長期的に丸投げできる会社、社内リソースが足りない部分だけサポートしてくれる会社と、さまざまです。
カメラマン、演者
動画のジャンルにもよりますが、カメラで撮影するならカメラマンが必要。人物が登場するなら演者も必要です。カメラを動かす必要がなければ、三脚を使うなどしてカメラマンと演者を兼ねることもできます。
必ずしもプロのカメラマンが撮る必要はありませんが、やり直しのききづらい料理の撮影、被写体の動きが激しいスポーツの撮影、ピンポイントで被写体を狙いたいドローン撮影などは、初心者では難しいのでプロへの依頼を検討しましょう。
動画編集者
最も人手が必要なのが、「動画編集」です。
企画の内容や動画の尺(時間)によって工数はまちまちですが、弊社が運営しているマルチジャンル系のチャンネル「たかしのお花畑 」では15分の動画のために半日~1日の編集時間をかけています。
社内に動画編集ができる人がいればいいのですが、一から覚えるには時間がかかりますし、経験の浅い人が編集するとどうしてもクオリティは低くなります。
動画編集者を雇うか、動画編集を外注するというのが現実的な方法でしょう。
どちらのコストパフォーマンスが高いかは、制作本数で試算してください。
「いや、スキルの蓄積をして内製化するつもりだ!」という方は、以下の記事を読んで検討してみてください。
分析、運用担当者
責任者的な立ち位置であるディレクターとは別に、実務を担当する人も必要です。
公開したチャンネルのデータ分析、視聴者からのコメントの監視・返信、コラボ等する場合には対外的な連絡……と、作業が多いです。
ここの工数を考えていないと、あとあとスケジュールが圧迫されてきます。
公開ペースを決める
コンセプトと担当者、外注範囲が決まったら、
・1本の動画を作るために必要な予算
・1本の動画を作るために必要な人的リソース
が、明確になってくるはずです。
自社が割けるお金と人を踏まえ、どれくらいのペースで公開できるかを決めましょう。
長く安定したチャンネル運営のためには、現実的な計画が大切。欲張りすぎて尻すぼみになり、初期投資がかかっただけだった…とならないよう慎重に判断してください。
問題はその結果、「1ヶ月に1回しか無理」といった結論になった場合です。
超有名人が登場するとか、毎回SNSで万単位の“バズ”が確実な圧倒的なクリエイティブなら別ですが、一般的な企業チャンネルなら最低でも1週間に1回は公開しないと登録者数は伸びません。
その場合は、外注の範囲を増やす、人を雇うなどで調整できないか考えてみましょう。
どうしてもコストが合わない場合は、無理せず他の発信方法を検討してみてください。
YouTubeチャンネルを作成する
Googleアカウントさえあれば、誰でも5分でYouTubeチャンネルを開設できます。
プロフィール画像(アイコン)や背景画像(チャンネルアート)の設定も簡単です。
開設する段階になったら、以下の記事をご覧ください。
動画を制作する
チャンネルの準備もできたところで、次はいよいよ動画の制作です。
大きく分けると「企画」「撮影」「編集」の工程があります。
企画
人気のチャンネルに育てていくには、「自分たちが伝えたいことを、視聴者が喜んでくれる動画で伝え」なければなりません。
魅力的に見せるための撮影技術や編集技術も重要ですが、動画が評価されるかどうかは企画で決まるといっても過言ではありません。
とはいえ、必ずしも天性の才能が必要なわけではありません。
「競合他社のチャンネルをたくさん見る」「いま流行っている動画をたくさん見る」といったインプットの努力と、それをロジカルに分析する知識があれば大丈夫です。
具体例を踏まえて解説している以下の記事は、必読です!
撮影
カメラマンに依頼しないのであれば、撮影機材は準備する必要があります。
企業チャンネルらしくキレイに撮りたいのであれば、やはり一眼レフカメラがおすすめ。
また、最近は「YouTubeショート」という短い縦動画も流行っています。
長い動画よりも制作コストがかからず、始めたばかりのチャンネルでも比較的ピックアップされやすいので、余裕があれば本編とは別にスマホで撮った縦動画も活用するといいでしょう。
編集
おもしろい動画になるかどうかは、編集にかかっています。
どんなにいい素材(元動画)でも編集次第でつまらなくなりますし、逆もしかり。
しかし当然、目を引いておもしろければ何でもいいわけではありません。
法律を遵守し、著作権や肖像権などを侵害しないこと。
その上で、YouTubeが定めている規約も守ること。
それは絶対条件です。
違反してしまうと収益化が無効になったり、動画やチャンネルが停止・消去されたりすることもあります。企業としての信頼を損なうリスクもありますので、必ず守ってください。
タイトルとサムネイルも重要
動画を見てもらうためには、視聴前に動画に興味を持ってもらう必要があります。
そのために重要なのが、タイトルとサムネイル画像です。
動画を公開する
動画の公開はそこまで難しいものではありません。
しかし、最初はいくつか初期設定が必要ですし、設定項目が多いので慣れるまではミスもしがちです。
動画を公開した後に視聴者からのコメントでミスに気付いた、なんてケースもよくありますので、公開後も気を付けておきましょう。
動画公開前に、以下の記事をぜひご覧ください。
YouTubeチャンネルを成長させる
企業がYouTubeチャンネルを運営する目的は、主に集客やブランディングです。
目的達成のためには登録者数や視聴数を伸ばす必要がありますし、それらが伸びないとブランディングとしては逆効果にもなります。
登録者数や視聴数を伸ばしていくためには、「視聴者のストレスを軽減する設定」や「視聴数を増やすコツの実践」、「次に繋がる分析」が重要です。
YouTubeには両者のための便利な機能が用意されているので紹介します。
視聴者のストレスを軽減する設定
チャプターを設定する
チャプター(目次)を設定しておくと、シークバー(再生箇所を表示する赤いバー)にマウスを合わせたときにシーンの画像とチャプターのタイトルが表示されます。
興味のある箇所だけを見たい視聴者にはありがたい機能で、視聴者の利便性が上がり、離脱(途中で視聴をやめること)防止にもなるでしょう。
字幕を付ける
YouTubeには動画の内容に合わせて文字を表示できる字幕機能があり、動画を視聴する際に、任意でON・OFFを切り替えることができます。
日本語以外の字幕を付けることで、海外の方にも視聴してもらえる可能性も高くなるので、ぜひ活用しましょう。外国人向けの動画ではないし……と思うかもしれませんが、想定外の側面でバズることもあり得ます。
また、電車内などで音声をOFFにして動画を見る人もいるので、日本語の字幕にも意味があります。
字幕の付け方はいくつか種類があります。
視聴数を増やすコツ
タグを厳選する
「タグ」とは、その動画のテーマを端的に示すものです。例えば美容系YouTuberがスキンケアの動画でタグを付けるとしたら「#美容」や「#スキンケア」となります。
タグを設定することで得られる1番の利点は、「関連動画」欄に載りやすくなること。
動画を再生したあとに類似ジャンルの動画が表示されたり、よく見るジャンルの動画が一覧に表示されたりすることです。人気YouTuberの「関連動画」に表示されたら大きな効果があるだろうことは、想像できますよね。
タグを設定したからといって必ず表示されるわけではありませんが、動画に興味を持ってくれる視聴者の目に留まる可能性は確実に上がります。
終了画面の設定
YouTubeでは、動画の最後にエンディングとして、おすすめ動画やチャンネル登録がすぐにできるボタンを「終了画面」として表示できます。
他の動画やチャンネル登録へ誘導できますし、毎回お決まりの終了画面が登場すると視聴者も認知しやすいです。設定して損はありません。
チャンネルを分析する
公開した動画がどれくらい見られたのか、どのあたりで離脱した人が多いのか、男女比は、年齢比は…?
視聴数を伸ばすためには、公開済みの動画のデータを分析しなければなりません。
開設時に定めたコンセプトが、狙ったターゲット層にちゃんと届いているかを確かめながらチャンネル運営することは、長期的にチャンネルを伸ばしていく上で重要なのです。
YouTubeには「チャンネルアナリティクス」という分析ツールが用意されているので、ただ漠然と動画を投稿するのではなく、面倒でも必ず分析してください。
まとめ
今回は0からYouTubeを始める手順と、開設したチャンネルを伸ばすために使える機能やコツをご紹介しました。
ここまで読んでいただけた方はご理解いただけていると思いますが、YouTubeは「動画を投稿すれば伸びる」といった甘い世界ではありません。スマホさえあれば誰でも気軽に動画を世界へ発信できるため、ただ投稿するだけでは、どれだけ出来の良い動画でも埋もれてしまうのが現実なのです(もちろん予算さえあれば、広告出稿してターゲットとなる視聴者に届け、視聴数を増やすこともできます)。
一方、順調にチャンネルが成長すれば収益化するチャンスも。ブランディングや集客目的の企業チャンネルで黒字になるほど稼ぐのはなかなか難しいですが、多少なりともコストを回収できればありがたいですよね。
今回ご紹介した内容を活かし、より確実に伸びるチャンネル運営を目指していきましょう。