コロナの感染防止対策をきっかけにテレワークを導入する企業が増えました。
弊社は2020年3月から早々に全社員テレワークになり、うまく軌道に乗ったためコロナ終息後も継続することが決まっています。
しかし一方、導入後に生産性の低下を理由に廃止する企業も少なくありません。おそらくこの差は、テレワーク特有の課題を解決できたか否か。
課題を認識して解決しないことには、生産性が下がってテレワークの継続が難しくなってしまうからです。
そこで今回は弊社での経験を元にテレワーク導入後の課題と対策方法をご紹介します。
日本でのテレワーク導入状況
総務省が発表した「令和2年通信利用動向調査」内のテレワーク導入状況によると、2021年のテレワーク導入企業は47.5%となり、コロナ前の2020年に比べ2倍以上に増加したとのこと。
さらに導入予定の企業も10.7%で、合計すると約60%の企業がテレワークを導入、または導入予定という結果となっています。
また同調査では導入企業のうち、テレワークを利用する従業員の割合も調査しています。
80%以上がテレワークだと答えた企業が6.7%なっているのは、コロナ前から考えると画期的な数字かもしれません。しかしこれだけテレワーク推進が叫ばれ、コロナ禍も2年が過ぎようとしている今、「テレワークやってます」と答えた企業のうち8割以上が「テレワークの従業員が5割以下」とは……。テレワークの普及はまだまだだと言わざるを得ないでしょう。
テレワークの課題と解決策
総務省がテレワーク導入企業へ行ったアンケートによると、コミュニケーションやセキュリティー、人材の評価に関する課題が多いという結果となっています。
弊社としてもそれは実感しましたので、それぞれを具体的に解説していきます。
コミュニケーション
テレワークにおけるコミュニケーションの問題は、2種類あります。
1つ目は、仕事面。弊社でも、社内外問わず、情報連携で漏れが起きたり、不慣れなオンラインミーティングやテキスト(メール、チャット)のみでの連絡で意思疎通がうまくはかれなかったりしました。
ただ、オンラインミーティングに関しては慣れで解決できる部分が多いため、対面のミーティングがオンラインに代わるだけの社外とのコミュニケーション問題は早い段階で自然と解消されていきました。
問題は主に社内。「なんとなく様子を伺いつつ進捗を把握する」といったことが難しくなりますし、直接の会話ならすぐ済む話がテキストの応酬に発展することもあるので、特に管理者側には慎重な状況把握が求められます。
2つ目は、仕事以外のオフの面。飲み会がなくなったことを歓迎する声も多いですが、一切雑談がない仕事環境というのも円滑にまわりにくいものです。コロナ禍では自由な外出もしづらいため、一人暮らしの人は特にストレスを溜めやすい環境になってしまいます。
オンラインミーティングの際に雑談タイムを設けたり、自由テーマでの1分間スピーチをするシステムを作ったりと、職場の空気を和ませる工夫をしている会社が多いです。
弊社では、テキストは「チャットワーク」、音声は「Discord」、ビデオは「Google Meet」とツールを使い分けています。ツールの一本化を試したこともあったのですが、チャットワークに一本化すると音声品質に問題、Discordに一本化するとテキストが見づらい…といった具合に不満が増えたので、それぞれの最も快適に使えるツールで使い分けることにしました。
実際に導入しているツールは以下です。
Chatwork(チャットワーク)
業務用のテキストチャットツールです。CMでもおなじみですね。
テキストだけでなく、画像や動画などファイルの送信もできます。
またプロジェクトやチームごとに社内・社外関係なくグループも作れるため情報共有の面でも優れたツールです。
メッセージの検索性も比較的高く、TODO管理できるタスク機能も便利です。
Discord(ディスコード)
元々はゲーム用に提供されているボイスチャットツールです。
「ビデオ会議するほどでもないが、テキストよりも話すほうが早い」という機会は少なからずあるので、音声専用のツールを導入しています。
ディスコードでは会話するメンバー同士が同じ“部屋”に入りますし、マイクやヘッドホンのアイコンで会話中かミュート状態かがわかります。今誰と誰が話しているのかが可視化されるため、大人数でも使いやすいです。
Google Meets
Googleが提供するビデオ会議ツールです。
顔を合わせてコミュニケーションを取りたい場合や、細かな意思疎通が重要な会議で利用しています。
Googleアカウントがなくても簡単に利用できます。スケジュール管理で利用していGoogleカレンダーとの連携も可能なため、弊社ではGoogle Meetsを利用しています。
専用端末購入など初期投資
テレワークになると業務用の新しいノートPCを購入したり、新たなICTツールの導入など初期投資が必要となる場合が多いです。
デスクトップPCでの作業がメインの会社であれば、全員分のノートPCを購入するだけでもかなりの金額になります。
そういった導入障壁となりがちな初期投資に関しては、国や地方、商工会議所など様々な団体から補助金や助成金といった支援が実施されています。
代表例として「IT導入補助金」があります。
ITツールの導入によって生産性を向上したい企業を支援する補助金です。
<詳しくはこちらの記事を参照>
テレワークにも!IT導入補助金の対象ソフト一覧【2021年版】
自治体でも補助や支援の仕組みが異なるので、ぜひ専門の部署に問い合わせてみてください。
情報セキュリティー
テレワークではインターネット利用が必須ですが、各々の自宅の回線で利用します。
会社のインターネット回線では専用のセキュリティー端末を設置するなどしてウィルス対策や不正アクセス防止の対策ができますが、自宅だと本人任せになる部分も多いため対策がしにくく、重要なデータへのログイン情報が漏出する危険性があります。
・ウィルス対策ソフトを会社で決めて指示する
・OSやアプリのアップデートを徹底させる
・メール設定の定期的な確認や迷惑メールフィルタの最新化
・他社の漏洩事例やセキュリティ関連のニュースを共有し、全員の意識向上
といった対策を、責任者を決めて実施する必要があります。
LastPass
テレワークでは、パスワード管理も懸念事項のひとつ。
弊社ではLastPassという組織内でパスワードを共有できるツールを利用し、PC本体にパスワードを保存したり、メールやチャットでパスワードを送ったりせずに済む仕組みを作っています。
新しいメンバーが追加になったときにも安全なので、おすすめのツールです。
契約書などの「紙」の扱い
社外との契約書や重要な社内稟議は、いまだに紙に捺印という企業も多いです。
しかしテレワークになると、郵送や捺印といった作業のハードルが急激に上がるため、電子契約ツールが急速に普及しています。
当然、法律上の問題もなく(※)、しかも締結書類はWeb上に保管されるため管理もしやすく、書類名などでの検索で瞬時に書類が探せる検索性にも優れています。
弊社ではGreatSign(グレートサイン)というWeb締結ツールを使用しています。
※法律上の有効性に問題のあるサービスもあるので、選ぶ際には注意が必要です。
<詳しくはこちらの記事を参照>
電子契約サービスならグレートサイン(Great Sign)!価格だけじゃない決め手とは?
従業員社員の評価方法
テレワークでは実際に勤務状況を見ることができません。
出社時は従業員の勤務態度なども加味して評価を行えましたが、テレワークでは成果から判断する他ありません。しかし、すべての職種に明確な成果物があるわけではなく、特に総務や経理、人事といった職種や中間管理職は上司には仕事量が見えづらいかもしれません。その場合は、作業内容を見える化する工夫も必要でしょう。
また、これまで勤続年数や勤務態度といった基準で賃金や評価を決定していた企業の場合は、評価制度自体を大きく見直す必要が生じる可能性もあります。
しかし、勤務時間や年齢ではなく実力や成果で測られるのは時代の流れ。テレワークをいい機会として、他社の事例も参考に評価基準を見直すのは会社にとってもメリットのあることだと思います。
勤怠管理
テレワークにおける勤怠管理では、出社した時間や勤務時間中の行動がわからないといった課題があります。
社員がサボったりしないかという心配をする方も多いでしょう。
実際にリクルートが2020年に行った調査では管理職の約56%がテレワーク中に部下がサボらないか心配しているという結果が出ました。
そういった対策として弊社では社員のスケジュールを把握するためにGoogleカレンダーを導入し、ミーティングや外出の予定を把握できるようにしたり、出社時と退勤時にオンライン上でタイムカードを押す、人事労務freeeというツールを導入したりしています。
さらに、勤務時間中は音声会話ツール(ディスコード)でいつ話しかけられても返事できる状態にしておくというルールにしてあるため、サボりがおこりにくい環境を作っています(休憩を取るときやミーティング中はそれを可視化できるルールを作っています)。
そもそも、上司や管理者が部下の仕事内容を把握していれば、「この仕事がまだ終わっていないのはおかしい。サボっているか、事情があるのでは?」と気づけるはずです。
実は「働きすぎ」が起きるケースも…!
テレワークでは公私の区別がつきにくく、仕事熱心な人だと「昼休みをきちんと取らない」「あとちょっとだからと、ついずるずる残業しすぎてしまう」といったことにもなりやすい環境です。しかもテレワークでは周りが気づきにくいので、その従業員が限界を超えてから問題発覚という事態に陥りやすいのです。
サボらせないことも大事ですが、働かせすぎないことも実は大事なのです。
郵便物の管理や代表電話の対応
テレワークでは会社に誰も出社していないという場合も多く、郵便物の受取りや代表電話の対応も課題となります。
郵便物をは回収するために定期的に出社したり、代表者か経理担当者の自宅へ転送するような仕組みをど導入する必要があります。
代表番号の対応は弊社では当初、担当者へ転送電話で対応する仕組みをとっていました。しかし電話対応の担当者が1人ではトイレにも行きづらく、負担が大きすぎるという判断になり、コールセンターで電話を受けてくれる電話代行サービスの利用を始めました。
オフィスを解約して住所と電話番号だけを用意してもらうバーチャルオフィスのサービスもありますが、弊社はオフィスはあるので「fondesk(フォンデスク)」という電話代行サービスのみ利用しています。
テレワーク導入のメリット
テレワークの導入には課題も多く、無理して導入しなくても。と考える方も多いかも知れません。しかし、先述の課題さえ解決できれば、テレワークを導入することで得られるメリットはとても多いんです。
生産性の向上
テレワークで生産性が下がったと感じている人には、信じがたい話かもしれません。
しかし、下がらないどころか逆に上がることもあるのです。
1つ目の理由は、デメリットにも見えたコミュニケーションの減少。
同じ場所にいるよりも話しかけられることによる作業の中断が少ないですし、静かな環境で1人で働くほうが生産性が上がるタイプの人も多いからです。また、通勤時間がなくなることで睡眠時間や余暇が増えて心身のコンディションが整うと、仕事にも良い影響が出てきます。
管理者側は状況を把握しづらいと感じるテレワークも、仕事をする社員から見ると大歓迎ということもあるのです。
2つ目の理由は、新しいツールの導入。テレワークをきっかけに導入したチャットツールで情報共有しやすくなったり、電子契約ツールで印刷や郵送の手間が減ると、自然と生産性は向上するでしょう。
社員満足度の向上
生産性の向上の段落でも触れましたが、テレワークで通勤時間が減ると、プライベートの時間が増えます。
また住む場所や働く場所もある程度自由にできるため、私生活を充実させやすくなり、労働環境に対する社員の満足度が向上します。
もちろん、一人暮らしのテレワークだと淋しい、自宅だと子どもがいて仕事に集中できないという人もいるでしょうから、個別の事情により対策検討は必要です。
優秀な人材確保が可能に
出社が義務でなくなると、求人も全国にかけることができます。選択肢が広がることで、理想とする人材を確保しやすくなります。
まとめ
課題が多いように思えるテレワークですが、しっかりと対策して導入することで、生産性や社員満足度、貴重な人材確保の面での優位性の向上を図る事ができます。
急に全社員フルでテレワークとなると社員同士も不安になる場合も多いため、これから始める企業様では一部の社員や一定期間でテレワークの導入など徐々に進めるのもおすすめです。
ぜひチャレンジしてみてください。