現在、YouTubeは日本でもっともメジャーな動画配信プラットフォームであり、その影響力はテレビよりも強い力を持つといっても過言では無くなってきています。
その証拠に2019年の小学生の「将来つきたい職業」ではYouTuberが第2位になり、最近では芸能界などの著名人によるYouTubeへの動画投稿が相次いで行われています。
一方でYouTubeにこれだけ注目と参加者が集まっている中、後発でYouTuberとして影響力を持っていくというのは、ますます厳しくなると予想されています。
そのため、今からYouTubeを始めて成功するためには、しっかりとした運用戦略を立てる必要があります。
そこで今回はYouTubeを成功させるための戦略の1つである『マルチメディア戦略』について、具体的な事例も交えて詳しく解説していきます。
マルチメディア戦略とは?
そもそもマルチメディア戦略とは一体どんな戦略なのでしょうか?
言葉の意味から一緒に確認していきましょう。
まずマルチメディア戦略とは、「マルチ(複数の)」と「メディア戦略(情報を伝達する媒体をどのように使うかを考えること)」が合わさった言葉です。
つまりマルチメディア戦略とは複数の情報媒体を用いた情報発信の戦略であり、複数のメディアを使いこなすことによりユーザーに効率的に情報を伝達する手段と言えます。
そのため、もしマルチメディア戦略を上手く取り入れることができれば、現在、知名度のないあなたでも多くのユーザーに動画を視聴してもらえる可能性を増やすことが出来るというわけです!
また似た言葉には、『メディアミックス』や『クロスメディア戦略』という言葉があります。
メディアミックスは意味としては殆ど同じですが、広告業界やマーケティング業界でよく使われる専門用語です。
一方でクロスメディア戦略は複数のメディアを使うという点では同じですが、複数の媒体に跨った情報発信を前提とし、それぞれの媒体ごとに表現を変えながら、複数メディアを繋げることで相乗効果に重きを置く点で異なります。
マルチメディア戦略を立てるには?
それではマルチメディア戦略を立てる際には、まず何から取り組むと良いのでしょうか?
ここからはマルチメディア戦略を立てる際のコツや、相性の良いメディアの解説と成功事例について紹介していきます。
YouTubeのマルチメディア戦略を成功させるコツ
マルチメディア戦略を成功させるためには、抑えておきたいポイントが3つあります。
- ペルソナの設定
- メディアの選択と集中
- 他メディアからYouTubeへの誘導
今から一緒に確認していきましょう。
ペルソナの設定
まず大前提として気を付けなければいけないことは、自分の情報発信に興味を持ってくれるターゲットが存在するかということです。
そもそも自分の発信を受け取ってくれるユーザーがいなければ、情報発信は成り立ちません。
なので、まずは自分が行う情報発信の内容をもとにペルソナ(情報を受け取るユーザー像)を明確にし、合致するペルソナが存在するかを慎重に調査していきましょう。
もしペルソナが現実にあまり存在しない場合は、発信する内容がニッチすぎることもありえるので、しっかりと市場の分析とペルソナの設定を行いましょう。
メディアの選択と集中
次に、利用するメディアの特性を理解した上で選定を行うことが重要です。
どんなメディアにもそれぞれメリット・デメリットが存在し、またメディアの種類によって利用するユーザーの趣味趣向や年齢層は異なります。
それに伴い利用ユーザーのニーズや好みも変化するため、自分の発信する情報と相性の良いユーザーが存在するメディアで情報発信を行う必要があります。
例えば、50~60代向けの健康に関わる情報発信を10~20代の利用するメディアで情報発信をしていたら、効果は上がりませんよね。
しかし、闇雲にメディアを増やしていっても意味はありません。
むしろ労力が分散して、どれも中途半端になってしまっては逆効果です……。
そこで最初は自分のペルソナ像がもっとも存在するメディアのうち1つか2つ程度に抑えて、集中して運用していくと良いでしょう。
他メディアからYouTubeへの誘導
また他のメディアで集めたユーザーをYouTubeへどのように誘導していくかを考える必要があります。
せっかく他のメディアで人を集めることが出来ても、YouTubeにまで誘導することが出来なければ、せっかくの努力も水の泡です。
ユーザーを誘導する手段は主にYouTube動画の埋め込み、またはリンクの設置ですが、メディアによっては利用に制限がかかるものもあります。
なので、メディアを選ぶ際にはYouTubeへの誘導がしやすいかもしっかり考慮しておきましょう。
ただ、いきなりメディアを選定するといっても難しいと思うので、これからYouTubeと相性の良いメディアを幾つかご紹介したいと思います。
YouTubeと相性の良いメディアは?
今回はYouTubeと相性の良いメディアの中でも、個人・法人を問わず利用可能なメディアから、オススメを選定しました。
- ブログ(オウンドメディア)
- SNS
- 別の動画・ライブ配信媒体
上記3つのジャンルに分けて解説していきます。
どのメディアにもそれぞれ長所と短所が存在し、利用ユーザーにもバラツキがあります。
メディアの特性をしっかりと調べた上で、自分の運営するYouTubeチャンネルのジャンルに合わせて、どのメディアを活用するかを選定すると良いでしょう。
ブログ(オウンドメディア)
まずブログ(オウンドメディア)のメリットの1つは自身で運営を行っているため、YouTubeというプラットフォームに縛られず、必要に応じたカスタマイズができることです。
YouTube動画をコンテンツ内に埋め込み、動画の見せ方などをコントロールすることで、ユーザーの視聴意欲を上げることが可能です。
また、ブログ(オウンドメディアの流入経路)は主にGoogleなどの検索エンジンなので、あまりYouTubeを見ていない中高年のユーザーにもアプローチできるところが魅力的です。
一方でデメリットとして、YouTubeの再生数が増えるかはブログ・オウンドメディア自体の閲覧数などに依存することになります。
そのため、YouTubeと同時期にスタートする場合、短期的にはあまり効率が良い方法とは言えません。
SNS
次にSNSのメリットとしては、プラットフォームの拡散力を利用できる点が挙げられます。
そのため、運用初期から多くのユーザーに動画を届ける機会を得やすく、またSNS上でバズることができれば、一気に知名度を上げることも可能です。
アプローチできるユーザー層や表現の手段などはSNSごとに異なりますが、主要なSNSで例を挙げると
- Twitter・Facebook:幅広い年代の方にテキストを中心に情報発信が可能で、URLをシェアしてもらいやすい
- Instagram・TikTok:学生を中心に画像や動画を中心に情報発信が可能で、イメージを伝えやすい
といった特徴があります。
一方でデメリットとしては、特定の媒体(Instagram・TikTokなど)では投稿にURLを埋め込めないことなど、プラットフォーム独自の制約の存在が挙げられます。
またSNSを使うにあたっては、以下の点に注意や工夫が必要です。
- YouTubeに比べ投稿できる動画の時間が短いため、SNS投稿用の動画編集の作業工数がかかる。
- SNS投稿の拡散ではなく、リンクでYouTube動画に飛んでもらうことが目的だと認識しておく。
別の動画・ライブ配信媒体
別の動画・ライブ配信媒体のメリットは、下記が挙げられます。
- 1本の動画で複数の媒体に投稿できるので作業負荷が軽い
- ライブ配信の場合、配信自体を動画素材として再利用できる
- ユーザー層がYouTubeの利用層とも重なり、ファンにすることができればYouTube動画の再生やチャンネル登録も期待できる
また特定のジャンルに特化している媒体を利用すると、より効率的にターゲットに合わせた戦略が取りやすくなります。
例としては、ニコニコ動画であればサブカルチャー系、Twitchであればゲーム実況、ツイキャスであればライブ配信などが挙げられます。
他にも別の動画・ライブ配信媒体で得た動画や配信のノウハウは、YouTubeでも活かせる武器になるので、一石二鳥と言えます。
また一部の動画・ライブ配信媒体では、初心者でも簡単に収益化できる仕組みを取り入れているところもあるので、すぐに収益化を図ることもできます。
このように比較的デメリットが少ないように思えますが、一方でマス(集団)がYouTubeに比べて小さいメディアが多いので集客力が弱いというデメリットはあります。
マルチメディア戦略の成功事例
ここからはマルチメディア戦略で成功したYouTuberの事例をいくつかピックアップして、ご紹介します。
自分のYouTubeチャンネルでは、どのメディアを活用するべきか考える上での参考にしてみてください!
もふもふ不動産
運営者:もふ社長(個人)
登録者数:22.1万人(2020年5月27日現在)
ジャンル:不動産・経済・ビジネス系YouTuber
URL:https://www.youtube.com/channel/UCsWTZ4nYODCwlE8rdv7DZzA
マルチメディア戦略①:ブログ
チャンネルを運営している、もふ社長は2017年頃から不動産や株式投資を専門にブログで情報発信している個人ブロガーさんです。
彼は個人でブログとYouTubeの2つを運営をしているため、自分のブログ記事の画像と動画内でのパワポ資料を使いまわしていくスタイルをとっています。
これにより少ないコストで2つ分のコンテンツを作り上げています。
そして面白いことに、このことがブログとYouTubeの関連性を強め、両方のコンテンツを連動させています。
例えば、動画でまずは簡単な説明の流れを掴み、今度は記事によって大切な用語などの確認をとるという授業のような体験をユーザーに提供しています。
また彼のブログでは記事の冒頭部分などに動画を差し込むということを行い、コンテンツに興味もきちんと持っているユーザーを動画へと誘導しています。
マルチメディア戦略②:Twitter・LINE@・メルマガ
他にも彼はブログとYouTubeを基盤に、TwitterやLine@、メルマガも活用しています。
基本的には不動産の知識など有益な情報を無料で発信していますが、たまにブログの記事やYouTube動画の紹介などを挟み、誘導をしています。
またTwitterは更新頻度、LINE@は双方向のやり取りがしやすいという特徴があり、それによりユーザーとの距離感が縮まっていきます。
そのため、彼はとユーザーの繋がりを強め、ファン化させていくことにより、読者や視聴者を増やしていくという戦略をとっています。
仮メンタリストえる
運営者:仮メンタリストえる(個人)
登録者数:38.1万人(2020年5月27日現在)
ジャンル:恋愛心理学・ハウツー系YouTuber
URL:https://www.youtube.com/channel/UCoR01KQRDnox6FBIn5Nc-YQ
マルチメディア戦略:TikTok
なぜ今回、仮メンタリストえるを取り上げたかというと、彼は2018年10月にチャンネルを公開し、約半年で20万人を突破という異例の速さで、一気に人気YouTuberに成り上がったためです。
現在では有名な彼も、無名であった最初のYouTube動画は全く見られなかったそうです。
そこで彼は『TikTok』を活用したマルチメディア戦略を行いました。
まず彼は本来伝えたかった恋愛心理学の詳しいハウツーはあえて切り捨てて、もっとキャッチーで若者に見られやすいノウハウのみのTikTok用の動画を作成しました。
そしてTikTokで「キスに導くためのメンタリズム」という動画を投稿し、見事バズらせました。
@_eruキスに導くメンタリズム ##最初右手って言ってる ##恋愛 ##心理学 ##メンタリズム♬ Eclipse - Jim Yosef
そして、継続的に動画をTikTokに投稿することによって2ヶ月という短い期間で、10万人ものフォロワーを獲得しています。
一方でTikTokではノウハウの概要しか伝えられないため、今度は「詳しく知りたい方はYouTubeで」という誘導をいれていきました。
そして、詳しいシーンでの使用例や根拠をYouTubeのみで伝えることで、TikTokにはない情報を伝えることでYouTubeのチャンネル登録者数も増加させていきました。
この成功の裏にはYouTubeとTikTokというプラットフォームの特性の違いを上手く生かした戦略があります。
実はTikTokでは新規に上げた動画を優先的にトップで表示してくれるという特徴があり、知名度の低い投稿者でも多くのユーザーに見てもらえる機会があるのです。
このようにプラットフォームの違いを上手く活用することで、彼のように成功のスピードを加速させることも可能になります。
もっと詳しく知りたい方は彼の対談の記事を読むのがオススメです。
月ノ美兎
運営者:月ノ美兎(いちから株式会社 所属)
登録者数:54.1万人(2020年5月27日現在)
ジャンル:エンタメ・配信・VTuber
URL:https://www.youtube.com/channel/UCD-miitqNY3nyukJ4Fnf4_A
マルチメディア戦略:ニコニコ動画
今回紹介したい事例は以下の動画によって、月ノ美兎の注目が一気に加速した事例です。
実はこの動画を公開した2018年2月16日時点では、まだ月ノ美兎もデビューして間もない2週間程度の新人VTuber(バーチャルYouTuber、CGのキャラクターを用いて動画投稿を行うYouTuberのこと)でした。
普段の活動はライブ配信が中心なので、ライブ配信を見ない新規のユーザーに気軽に見てもらうため、配信のおもしろ場面を切り抜き、まとめた短い動画を作成したようです。
しかし、公開後すぐファンによってニコニコ動画へと動画が転載され、ひょんなことからランキングの上位に上がった結果、多くの人に見られる機会をえることができました。
そして次の日にはニコニコ大百科の急上昇ワードで1位を取るなど話題になり、一気に知名度を上げることに成功しています。
ネット民が注目!急上昇ワードランキング 2月17日版です。
トップは、バーチャルYouTuberの「月ノ美兎」 @MitoTsukino さんでした。
続いて、羽生善治竜王、広瀬章人八段を破り優勝した「藤井聡太」六段。
3位は平昌五輪のフィギュアスケートで金メダルを獲得した「羽生結弦」選手でした。 pic.twitter.com/Vhcz51TjQ1— ニコニコ大百科 (@nico_nico_pedia) February 19, 2018
普通のメディアで考えたら、藤井聡太さんや羽生結弦選手を抑えて、デビュー2週間の新人VTuberにこれだけ注目が集まることはまず無いでしょう。
しかしニコニコ動画の利用者というニッチなユーザーに刺さるコンテンツだったため、ここまで注目を集めることに成功しました。
今回の例では他人による転載でしたが、この手法は自分自身で行っても十分に効果的でしょう。
さいごに
今回はYouTubeにおけるマルチメディア戦略について解説をしました。
マルチメディア戦略は今後、YouTube運用だけでなく他メディアの運用においても、成功の鍵となる重要な要素なのは間違いないでしょう。
しかし、あくまでマルチメディア戦略は多くのユーザーへアプローチするための手段でしかありません。
やはり、もっとも重要なのはユーザーにとって魅力的な動画をいかに作っていくかということです!
「ユーザー視点」で動画の質を高めた上で、コンテンツをより多くの人に届ける手段としてマルチメディア戦略を活用していってください。
マルチメディア戦略を考えるためには、現在のYouTube市場への理解も大切です。
YouTube市場について詳しく知りたい方は、ぜひ下記のリンクから関連記事をご覧ください。