現在、YouTubeが公開しているデータによると、世界中で毎月20億人以上のユーザーがYouTubeを利用しており、視聴回数は数十億回にも上ります。(2020年7月27日現在)
日本においても近年、ヒカキン・はじめしゃちょーを筆頭とした人気YouTuberの登場により、YouTubeというメディアとYouTuberという職業は広く世に知れ渡ることになりました。
また、現在では人気YouTuberのテレビ番組への出演、企業とのタイアップ動画の増加など、その存在感と経済圏は年々増しています。
そんなYouTube市場について理解を深めることは、今後のビジネスチャンスを考える上でとても重要です。
そこで今回は、日本におけるYouTube市場の現状と今後について詳しく解説していきます。
日本国内のYouTube市場の動向
それでは現在の日本国内のYouTube市場について把握するため、データを見ていきましょう。
国内におけるネット利用の推移
まずは国内のネット利用がどれだけ広まっているかについてのデータを見ていきます。
一般的にネットの利用者や利用時間は増加傾向にあるとされ、テレビ等で「若者のテレビ離れ」の話はよく挙げられますが、実際の具体的な数値としてはどうなのでしょうか?
総務省による調査によると、平日の主なメディアの利用時間は下図のようになっています。
全年代で最も利用時間が多いのはテレビのリアルタイム視聴ですが、グラフでわかるように10〜20代ではネット利用の方が多いです。
このことから、10〜20代の若者は確実にネットから情報を得る機会が多くなっていることが分かります。
また40〜60代においてもネット利用は年々増加傾向にあるため、今後は中高年~高齢者層においてもテレビ(リアルタイム)視聴<ネット利用という構図が一般的になると思われます。
そのため、全体の傾向としてネットの利用時間は今後さらに伸びると言えそうです。
国内のYouTube利用率等の推移
次に国内のYouTube市場の大きさを知るために、国内におけるYouTubeの利用率等の推移に着目していきます。
総務省の調査によると、2015〜2019年までのYouTube利用率と投稿率は下図のようになっています。
利用率が2015年時点で既に半分以上というのも驚きですが、現在では4分の3以上が利用している状況です。そして、この増加傾向は今後も続き、日本人口の8割がYouTubeを利用する日も近いでしょう。
一方、投稿率の方は2~3%程度を推移しており、利用率に比べると低いものの若干の増加傾向にはありそうです。
つまり全体としては一部の人々が動画を投稿し、その動画を多数のユーザーが楽しむという傾向が読み取れます。
また、日本の人口を1億2千万人と仮定すると、利用者数は9千万人、投稿者数は324万人という数値になります。
わずか3%といっても、300万人規模の人が投稿をしており、 YouTube市場がいかに大きいかが分かります。
日本におけるYouTubeの影響力
では、YouTubeは私達の社会にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
総務省の平成30年度の調査によると、主要なソーシャルメディアの利用率は下図のような結果となっています。
インフルエンサーを活用したマーケティング手法で話題になることも多いTwitterやInstagramですが、実際の利用率を見るとYouTubeはそれらのSNSの倍にも上ります。
このことは、より広いユーザー層にアプローチができるメディアであることを意味すると同時に、YouTubeがLINE同様、日本のインフラの1つになりつつあることを示していると言えるでしょう。
また、株式会社Macbee Planetによる調査では、主要なSNSの投稿のうち、最も購入動機となるのがYouTubeであるという結果が示されています。
その割合は全体の30%であり、理由としては動画による「具体的な使用感」や「現物のわかり易さ」が挙げられるようです。
このようにYouTubeは利用者数の規模・購買への影響力という2つの観点から見て、ともに重要な位置を占めているソーシャルメディアだと言えます。
そのためYouTube市場は今後、非常に重要なポジションを担うことでしょう。
ソーシャルメディア、SNSとは?
ここまでの説明で、「ソーシャルメディア」「SNS」の違いが気になっている人も多いかと思うので補足しておきます。
ソーシャルメディアは個人が情報の受発信できるメディア全般。SNSはその中でも特に、会員同士の交流や情報交換を目的とするものを指します。
とはいえその境界は明確ではなく、YouTubeはSNS的にも非SNS的にも使われているソーシャルメディアだと言えるでしょう。
LINEにしても、ストーリーを頻繁に投稿している人はSNS的利用ですが、個人LINEのみだと非SNS的利用でしょう。
さらに後述する有名人のYouTubeチャンネルとなるとテレビに近く、もはやソーシャルメディアとも呼べないのかもしれません。
近年の国内YouTube市場の盛り上がり
YouTube市場の巨大さはよく分かったと思いますが、近年、更に日本国内のYouTube市場は盛り上がりを見せています。
そこでこの段落では、国内におけるYouTube市場の盛り上がりを印象付ける現象をピックアップしてお伝えします。
芸能人の本格的な参戦
まず1つ目として近年、芸能人によるYouTubeへの参戦が本格化し、盛り上がりを見せていることです。
お笑い芸人のオリエンタルラジオの中田敦彦さん、俳優の佐藤健さんや女優の本田翼さん、スポーツ選手のダルビッシュ有選手など、知名度の高い方々がどんどんYouTubeチャンネルを開設しています。
実際にデータとしてもユーチューバーNEXTが行った調査(2019年11月1日調べ)によると、芸能人のチャンネル開設数は2018年と2019年では約2.5倍にも増加しています。
また2020年7月現在も猛威を奮っている新型コロナウイルスの影響もあり、2020年の3月頃から芸能人によるYouTubeへの参加は更に増加の一途をたどっています。
もともと知名度のある芸能人がYouTubeに参戦していくことで、一気に再生数と登録者数を稼いでいるのが多く見られます。
また現在、YouTuberによるテレビ番組への出演やCMなども増加しており、芸能人によるYouTubeチャンネルの開設が一般化していけば、確実に両者の違いは曖昧になり、無くなっていくでしょう。
それにより徐々にYouTubeとテレビといったメディアの違いもまた意味を無くし、類似の媒体として認識され、有名YouTubeチャンネルはテレビのチャンネルと同等の地位を持つかもしれません。
何より今後は、より強力な資金力や影響力を持つ大企業やプロフェッショナル達が利益を求めてYouTubeに参加をし、苛烈な競争社会へ移行していく可能性も強まっています。
そのため今後、新規にYouTubeチャンネルを始める方には厳しい世界が訪れると思われます。
一方で、これまでテレビを中心に視聴していたユーザーも、芸能人の本格的な参入をきっかけに、YouTubeを積極的に視聴し始めるという現象が起こる可能性があり、新規でYouTubeを始める方にとっても新しいニーズの拡大はチャンスになるでしょう。
ビジネス利用の拡大
そしてもう1つの大きな流れは、YouTubeを積極的にビジネス活用するという傾向です。
CA Young Labによる2017年国内YouTuber市場調査によると、国内のYouTuber全体の収入総額は2022年には579億円規模にもなると予測されています。
これは2015年の33億円と比較すると、およそ17.5倍にもなり、社会全体としてYouTuberの影響力を活用したビジネスへの期待から、投資を行っていると考えられます。
そのため、様々な企業がビジネスへのYouTube活用を検討しています。
例えば2019年の6月には山崎製パンでは人気YouTuberのヒカキンを起用し、以下のようなタイアップ動画を作成しています。
その結果、1位に選ばれたカレーパンは前月比で1.5倍の出荷が増加したそうです。
また、企業や経営者自らがYouTubeチャンネルを開設し、ブランディングを行ったりすることで、ビジネスに活用する事例も増えてきています。
また、株式会社divのマコなり社長はビジネス系YouTuberとしてデビューすることで、自身の認知度を高め、結果的に自社サービスの認知に繋げています。
このように今後は、YouTuberという演者、またはYouTubeというメディアを活用したビシネスモデルが一般的になっていく可能性がありそうです。
YouTube市場の今後について
次にYouTube市場に訪れる可能性の高い未来について、お話していきます。
テレビ制作プロダクションの本格的な参画
まず芸能人が本格的にYouTubeに参加したことに引っ張られる形で、今後はテレビの裏方であったテレビ制作プロダクションがYouTubeに本格的に参画してくることが考えられます。
今までのテレビ番組制作で培ったプロの動画技術は、動画制作のアマチュアが多いYouTubeにおいては差別化できる強力な武器になることが考えられます。
実際、既にNHKの「チコちゃんに叱られる」などの番組を手掛ける共同テレビジョンが人気チャンネル「にじさんじ公式チャンネル」とタッグを組んだ動画を作成し、同チャンネルの中でも一際高いクオリティで3ヶ月あまりの期間で100万回近く再生されています。
今後、気づかないうちにテレビ制作プロダクションがYouTuberの放送作家などを担当すること等が起きるかもしれませんね。
5Gの到来による用途の拡大
2020年3月末から、日本でも次世代通信企画5Gのサービスがスタートしました。
(まだ対応している機種が少ないことや、対応エリアも限られているので5Gの到来を実感することはなかなかできませんが。)
5Gによって屋外においても自宅やオフィスの光回線と同等の通信速度を確保できるようになれば、YouTubeなどの動画配信サービスを外でも気軽に楽しめるようになります。
それにより、ネットにおける中心的なコミュニケーション手段であったテキスト+静止画が、より情報量の多い動画へと置き換わる可能性が出てきています。もしかすると今後はYouTubeが、Googleのような検索サービスの役割の一部を代替していく未来もあるのかもしれません。
そうなるとますます、YouTube市場はビジネスの場としてより重要な経済圏になるでしょう。
YouTubeをどう活用していくべき?
YouTube市場が今後とても重要なビジネスの場になるのは十分おわかりいただけたと思います。
では、どのようにYouTubeをビジネスへ活用していくべきかを最後にお伝えします。
結論から言うと、即効性を求めるか否かでYouTubeの活用方法はガラリと変わります。
もし即効性のあるYouTube活用を考えている場合は、有名YouTuberとのタイアップ広告やYouTube広告などの広告戦略をマーケティングのメインに考えていくのが良いです。
なぜなら、YouTubeチャンネルは登録者数や再生数が増えるまで、なかなかユーザーに情報を届けにくい媒体だからです。
そのため短期的な利用が目的の場合、有名YouTuberやYouTube自体の影響力を借りたほうがスムーズに情報を届けることができます。
一方で、中長期的な計画でのYouTube活用を考えている場合は、自身または自社のチャンネルを開設し、運用していくのが良いでしょう。
登録者数や再生数が増えるまでは実感が薄いかも知れませんが、自分たち主導のメディアを生み出すことができるので、サービス・商品の紹介などの活用に利用することができます。
また再生数次第ではYouTube広告による収入、タイアップの依頼などで多角的なマネタイズも見込めます。
ただし今後は、プロ化していくYouTubeの中でも真っ向から勝負ができるコンテンツ力や、動画の魅せ方を磨くことが必要になります。
そのため、アドバイザーとして既存のYouTuberや動画編集者・動画編集事業者に協力してもうこと等を考えてみるのも良いでしょう。
まとめ
以上のように現状を分析した結果、YouTubeの市場規模は今後も成長していくのは確実と言えそうです。
ただし、今までのようなアマチュアが一発逆転を狙える場でなくなりつつあるのも事実なので、YouTubeの活用法については慎重に吟味していきましょう!
移り変わりやすいYouTube市場ですが、しっかりと理解した上で次の一手を考えられるよう、引き続きYouTube市場の動向には注意を払っていきたいものです。