テレワークにより一層進んだペーパーレス化。なるべく紙を使わず(印刷せず)、データでのやり取りを行おうという動きです。電子契約サービスのCMもよく見ますよね。
しかし紙の書類は、取引相手との契約書や経理関係など、何かとデリケートな情報を扱うもの。その運用方法を変えるにあたっては、「今までのやり方を変えて大丈夫なのか」「うちは全員がフルリモートになるわけではない」と、導入に消極的な人もいるでしょう。急に今までのやり方を変えるのは、ほとんどの人にとって大きな抵抗があるものです。
ですがペーパーレス化は、やってみると非常に効率的。印刷、捺印、郵送、保管といった手間の軽減は、確実に仕事の生産性を上げます。テレワークをやるやらないに関係なく、導入する価値はありますよ。
今回は、ペーパーレス化の導入から運用までの方法を解説していきます。
ペーパーレス化とは?
ペーパーレス化は2019年4月から施行された「働き方改革」の具体策として挙げられている取り組みです。書類などを電子化して、紙の利用を減らそうとすることです。
電子化とは、紙を使わずにPDFファイルやメールを活用し、パソコンやwebで作業を完結させること。
紙の印刷物をスキャンして保管したりメールで送ったりするのは、郵送の手間削減や省スペースにはなりますがペーパーレス化とは言い難いです(ペーパーレス化の一歩にはなります)。
実はペーパーレス化の考え方は1970年代からありました。しかし当時は今のようにインターネットも普及しておらず、パソコンやサーバーも高額な時代。紙を減らしたくても減らせず、そこまで浸透しませんでした。
そして、メールが広く普及するようになったあとも、会議資料や契約書等では従来の紙運用がなかなか変えられない状況が続いていました。
しかしコロナ禍になりテレワークを導入する企業が多くなると、署名・捺印・郵送の非効率さが浮き彫りになりました。結果、今まで以上にペーパーレス化をすることの重要性が認識され、飛躍的に広がっています。
ペーパーレス化をためらう理由
2021年にペーパーロジック株式会社は東京に本社がある企業の経営者・役員105名を対象に調査を行いました。
paperlogicより引用: https://paperlogic.co.jp/news_20211227/
調査結果としてペーパーレス化をおこなった企業は約7割となっています。それに対して約3割の企業はあまり積極的に行っていません。企業がペーパーレス化をためらう理由は、なんでしょうか。
セキュリティ面の不安
ペーパーレス化により、重要書類をインターネットを介してやりとりすることになります。サイバー攻撃により業務に大きな支障が出たというニュースも耳にします。
ペーパーレス化により「重要なデータが社外に漏洩するのでは?」「誰でもアクセスできてしまうのでは?」と、セキュリティ面での不安が挙げられます。
業務フローの変更が必要
紙運用は非効率とはいえ、職場のメンバーがみんな慣れていて、ミスも起きない体制ができています。電子化すると、その今までの業務フローを変更することになります。慣れるまでに時間を要しますし、その間、ミスも起きるでしょう。ミスが起きるくらいなら、従来通りのほうがいい、という考え方です。
取引先が紙運用
取引先からの書類が紙だから、自社でも紙だという企業はあるでしょう。電子化を導入しても紙でのやり取りが多く残るなら導入する意味が薄いという判断になることもあります。
電子化の方法がわからない(ツールの選定と導入費用)
電子化にあたっては、webツールの導入が必要です。今はいろいろなサービスがあり、それぞれに特徴があります。初期費用や月額・年額費用もかかります。無料ツールも多いですが、会社であれば「無料で大丈夫なのか」という不安も生じます。
電子化しようにも、具体的にどうすればいいのかわからない、ということも多いです。
それでもペーパーレス化した方がいい理由
ここまで読んで、「やっぱり紙でいいじゃないか」と考えるかもしれません。
しかし、それでもやはりペーパーレス化は進めるべきです。
ペーパーレス化の流れは止められません。電子化の運用を徹底すれば紙以上にセキュリティを強化できますし、慣れれば業務効率が飛躍的に上がるからです。
そして、いつまでも紙運用していることで「時代遅れの企業」になり、新規取引先として選ばれなくなったり、優秀な人材を確保できなくなる可能性があります。
ペーパーレス化の対象と導入方法
では、具体的なペーパーレス化の方法を説明していきましょう。
どの業務がどのように変わるのか解説していきます。
勤怠管理
出勤簿などの勤怠管理はクラウド型の勤怠管理ソフトに置き換わります。紙のタイムカードはテレワークでは使えませんので、より柔軟な働き方にマッチするのはクラウド型の勤怠管理ソフトです。
PCやスマホから出退勤の時刻を入力するソフト、アプリが主流です。
中にはICカードを使って勤怠管理をするソフトもあります。
また、ソフトによっては有給や代休などを管理する休暇管理の機能も備わっています。
勤怠管理のソフトだと「ジョブカン」「マネーフォワード クラウド勤怠」などがあります。
契約書
契約書は電子契約サービスで運用できます。「契約書ってペーパーレスでやってセキュリティや効力は大丈夫なの?」と思うかもしれません。しかし、手書き署名や捺印と同じ効力が法的に認められている電子契約サービスは多数あります。
効力のないサービスも一部ありますので、サービスを選ぶ際には確認が必要です。弊社では、GreateSignというサービスを利用しています。
資料チェック
資料チェックが必要なときは、部下が印刷して上司に渡す。上司は赤ボールペン等で朱書きしながらチェックする。チェックが終われば部下に戻し、部下は修正を反映して捨てる。といったことが多いかと思います。
しかし、それに使われる紙の量は途方もない量になっているはず。やはりここもペーパーレス化が必要です。
officeのファイルであればコメントを入れたり、PDFであれば編集ソフトを使って追記するなどの方法があります。また、手書きでチェックしたい人も、タブレットとペンを使って資料に書き込むこともできます。
最近のタブレットやペンは進化しているので、慣れれば快適に使えます。
但し、格安品はやはり使い勝手や反応が良くないので、資料チェック目的であれば機能重視で選ぶのをおすすめします。
配布資料
説明会やプレゼンのような場面でも紙の配布資料は省略できます。
①事前に資料をメールで送る(またはクラウドで共有する)
②会議時は、Zoom等のオンライン会議ツールの「画面共有」で説明する
③会議で出た修正点や意見を反映し、最新資料としてメールで送る(またはクラウドで共有する)
といった手順にすれば、最新情報の認識漏れもありません。
ペーパーレス化に当たっての注意点
実際にツールを導入する前に、できるだけ運用方法についてルールを決めておきましょう。運用方法が決まっていないとアクセス権限などがバラバラに設定されるなどセキュリティ面でもリスクがあります
業務フローの見直し
ペーパーレス化を導入する前に、今、「誰が・どんな順番で・どんなことをしているのか」をすべて洗い出してみましょう。実は不要な業務が見えてくるかもしれません。現在のフローを明確にすることで、スムーズな電子化ができます。
ツールやアカウントの管理方法
何か特別な理由がない限り全員同じツールを使用しましょう。みんなチャットツールなのにひとりだけメール、といった運用では当然非効率になり、漏れも起きやすくなります。
特に重要なのは、パスワードの管理です。パソコンに記憶させてしまうと、パソコンが盗まれたときや不正アクセスされたときに危険。組織でパスワードを管理できるLastPassというツールもあります。
一部残る紙運用のフロー
取引先が紙であるとか、郵便物をチェックしないといけないなど、どうしても紙でしかできない業務もあると思います。その場合は誰が担当しているのか、どのような業務なのかを共有しましょう。
そして、もしものときは担当者以外でも対応できるようにマニュアルを作っておきましょう。そうすれば紙の業務だけ属人的になることはありません。
過去書類の保存方法
原本など電子化せずに保管する書類については、今まで通り施錠できる金庫などに入れて保管しましょう。この機会に、保管期限を整理しておくといいですね。
目的は紙の削減、すべてをペーパーレス化する必要はない
ペーパーレス化は紙の利用を「減らそう」とすることであり「ゼロにしよう」というものではありません。紙を使わなくていい業務はなるべくデータでやり取りしよう、というだけです。
「パソコンでの資料チェックは見落としやすくて苦手だ」と感じる人は、印刷すればいいのです。そのときに、「全ページ印刷する必要があるのか?」「全員分を印刷する必要はあるのか?」と考え、印刷の量を減らしていくのがペーパーレス化です。
まずはできる範囲からペーパーレス化してみましょう!