SNSが普及し、誰もが簡単に情報発信できるようになった昨今。
日常に溢れる著作権侵害が話題になることが増えてきました。
▪️ テレビ録画の転載(つかまるよ、マジで!)
▪️ SNSアイコンへのアニメキャラクター使用
▪️ 漫画のスクリーンショット画像の使用
著作権者の許諾がない場合、これらはどれも著作権侵害であり違法行為です。
今記事を読んでいるあなたも、知らないうちに(あるいはこれくらいはいいだろうと思って)著作権を侵害したことがあるかもしれません。
さらには、SNSで個人のクリエイター活動が増える中、
「Tiktokにあげた動画がYouTubeに転載されていた」
「Twitterにあげたイラストが勝手に使われていた」
というケースも頻繁に発生しています。
加害者にも被害者にもならないよう、著作権の正しい知識を身に付けましょう。
著作権とは
著作権は知的財産権のひとつで、著作物を創作した人が有する権利。
簡単に言うと、「自分が作ったものがどう使われるかは作った人自身が決めてよい」という、当たり前の話です。
ちなみに著作権とは、文章、音楽、絵画などの美術作品、アニメや漫画など。難しく言うと「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第二条第1項第1号)ということになるのですが、プロの作品に限らず、個人がSNSに投稿した日記や落書きのようなイラストにも著作権は発生します。
なお、著作権を有するのに特別な手続きは必要ありません。
著作物を創作した時点で自動的に権利が発生します。
著作権は親告罪、しかし一部非親告罪化
手続きなく自動的に発生する著作権ですが、さきほども書いたように著作権は「自分が作ったものがどう使われるかは作った人自身が決めてよい」ということ。
「自分の作品を守るために著作権侵害は断固許さない!」
「コピペでシェアしてくれたら宣伝になるから、迷惑どころか大歓迎!」
「時間と労力がもったいないから、気分は良くないけど黙認でいい」
など、考え方は著作権者によってまったく違います。
そのため、著作権侵害は基本的に、訴えられないと罪には問われません(親告罪と言います)。
実際、著作権侵害はイメージや利益面などにおいて実害を与える場合などを除き、ほとんど黙認されているのが現状です。
しかし2018年12月より一部「非親告罪化」し、著作権者以外からの告訴も可能になりました。
著作権者本人に訴える気がなくても、「それは法律違反だ!」と第三者が訴える可能性があるということです。
著作権侵害が広く認知されるのはいいことですが、著作権者が黙認しているファン活動が衰退したり、SNSで拡散されづらくなったりする面もあり、クリエイターにとってその是非の判断は非常に難しいところです。
知らないうちにやっているかも?身近で起きる著作権侵害
SNSでの発信
TwitterやinstagramなどのSNSで気軽に発信している画像。もしかして、誰かの著作物ではありませんか?
著作権侵害は私的利用の範囲内ならOKという例外があるのですが、SNS上での投稿は不特定多数のユーザーに対して情報発信する行為であるため、プライベートで利用しているアカウントであっても私的利用の範疇を超え、公衆への発信となります。
そのため、SNSのアイコンにアニメの画像を使用したり、漫画のスクリーンショットなどを投稿したりするのは、どれも著作権の侵害です。
SNSでも日常的に見かけるもので、著作権利者自身が好意的なリアクションをしていることもあるため、知らない方も多いのではないのでしょうか。
しかし、もし「皆やっているから大丈夫」「咎められていないから問題ない」といったような認識を持っているのであれば危険です。
いつ訴えられるかわからないというリスクを認識し、基本的には自分が著作権を持っている画像や文章を投稿するようにしましょう。
フリー素材
「フリー素材であれば大丈夫」という認識も、実は大間違いです。
無料で使える素材であっても、中には商用利用が許可されていないものも存在するからです。
企業ではなく個人アカウントだから商用ではない、という判断も間違い。
アフィリエイト収入が発生しているようなブログも商用なので、利用規約はきちんと確認しましょう。
又、商用利用が可能な著作権フリーの著作物であっても、規約により一部制限がついている場合があります。
例えば、有名なフリー素材サイト「いらすとや」の場合、“画像を商用利用する場合は1つの制作物につき20点(重複はまとめて1点)まで無償”であり、“21点以上の素材を商用利用する場合は合計枚数×1000円の金額が発生”という規約が設けられています。
フリー素材を利用する場合は 何がどこまで「フリー」なのかを事前に確認するようにしましょう。
ゲーム実況
動画投稿、生配信で人気ジャンルであるゲーム実況。
これも著作物であるゲームソフトの内容を公衆に向けて発信する行為であり、著作権法に反する行為です。
いままであまり問題にならなかったのは、著作権者が黙認していたからです。しかしゲーム実況というジャンルが確立され配信で大金を稼ぐ人も珍しくなくなった今、任天堂などの大手ゲーム会社がガイドラインを作成したり、近年では新発売のゲームにガイドラインが用意されたりするようになりました。
ゲーム会社による環境整備が行われたことで配信者も安心できるため、ゲーム実況はより活発になっています。
反面、許容範囲の線引きが明確になったことで、特にSNS上では違反者に対しては厳重な処罰も行われるようにもなりました。
実際に大手VTuber事務所のゲーム実況動画で、大量の規約違反が問題となった事例も存在します。
「個人だから」
「周りがやっているから」
「収益化していないから」
「怒られたら消せばいいから」
このような理由で安易にゲーム実況を行わず、事前にガイドラインや利用規約をよく確認するようにしましょう。
二次創作
二次創作とは、他者のオリジナルの著作物(一次創作)を元に作られた作品のこと。同人誌や曲のリミックス、ゲームなどのキャラクターを模倣した3Dモデル(通称MMDモデル)などです。
ゲーム実況と同じく二次創作という文化も古くから存在していますが、これも著作権法上は違法行為に当たります。
ですが、ネット上の投稿削除や逮捕などはほとんど行われませんでした。
なぜ著作権者が黙認しているのか、それにはいくつかの理由があります。
- 作品そのものを盛り上げ、原作の人気に良い影響を与えると判断して黙認しているから
- 規約により制限付きで奨励しているから
- 著作権者自身に二次創作の経験がある、もしくは二次創作に対する理解があるから
- 告訴にかかる金銭的、時間的コストを考え、やむを得ず放置をしているから
しかし規約により奨励されている場合を除き、残りは正式に許諾を取っているわけではありません。著作権者の意向次第で、厳しく取り締まることはいつでも可能です。それを理解し、規約やガイドラインに則って二次創作を行うようにしましょう。
なお、元の著作物から多少色を変更した程度では二次創作に該当せず、コピーやパクリとみなされる場合もあります。二次創作が奨励、黙認されている場合でも、それが二次創作と呼ぶに値するかどうかには気を付けてください。
違反した際の罰則
実際、著作権の侵害は以下のような罪に問われる可能性があります。
旅先で撮ったキレイな風景写真をSNSに上げたら勝手に利用された!というような事態は誰にでも起こり得ますので、著作権者としても大まかに覚えておくと良いでしょう。
- 著作権、出版権、著作隣接権の侵害の場合
→10年以下の懲役、又は1,000万円以下の罰金 - 著作者人格権、実演家人格権の侵害などの場合
→5年以下の懲役、又は500万円以下の罰金 - 法人が著作権等(著作者人格権を除く)を侵害した場合
→3億円以下の罰金 - 有償コンテンツの無断アップロードだと知った上で録音や録画、ダウンロードした場合
→2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金
これらは一部ですが、その他にも詳細な罰則が存在します。
(参考:公益社団法人著作権情報センター)
著作権の侵害を指摘されたら?
故意・過失に関わらず、著作権侵害をしていると指摘されることがあるかもしれません。
▪️ 著作権者から指摘を受けた場合(指摘内容に納得できる場合)
指摘が事実であるなら、丁寧に謝罪し、速やかに著作権者の指示に従いましょう。
取り下げ、出典の明記、場合によっては使用料の支払いなどです。
黙って指示には従うものの謝罪の返信をしない人がいるのですが、それはマナー違反です。
▪️ SNS運営者など、著作権者以外から指摘を受けた場合
再度利用規約を確認し、こちらも事実であるなら速やかに対処しましょう。
AIによる判断の場合は間違っていることもよくあるので、異議がある場合は可能な限り申し立てを行います。
(問答無用で削除されてしまう場合もあります)
▪️ その他(指摘内容に納得できない場合など)
ごく稀に、著作権侵害の指摘が大きなトラブルに発展することもあります。例えば、
「著作権侵害は事実だが、法外な使用料を請求されてしまった」
「素材サイトから適正にダウンロードした画像だったが、実は著作権違反の画像だった」
など。
後者はまずあり得ませんが、素材サイト運営者のチェックミスで実際に起きたトラブルです。
これは手に負えない、と思ったら、すぐに誰かに相談しましょう。
弁護士が確実ですが、ケースによってはSNSが役に立つこともあります。
著作権が侵害されたら?
逆に著作権侵害の被害者となった場合、以下の3つの対処方法が挙げられます。
トラブルに発展した場合に逃げられる可能性があるので、連絡する前に必ず証拠画像や公開されている情報、アカウント名などは可能な限り保存しておきましょう。
1. 直接の連絡
DMを開放している人や連絡先を公開している相手には、直接該当部分の取り下げをお願いしてみましょう。
著作権侵害をあまり意識していない人も多いので、悪質だと感じる場合と除き、責める調子ではなく「私のオリジナル作品なので著作権上問題があります。取り下げてください」と丁寧に伝えるのがポイントです。そうすれば、丸く収まる場合が多いです。
また、取り下げは不要だが出典だけは書いておいてほしいという場合は、出典元やリンク先の追記を依頼すればOKです。
なお、悪質な著作権侵害に対してお金を要求したい場合は、それなりの準備が必要です。警告目的がメインであればいきなり請求書を送るという方法もありますが、本当に払ってほしいと考えているなら弁護士に相談するのがおすすめです。
2. 通報機能の利用
SNS上で直接連絡が取れない場合、通報機能を利用しましょう。
自身の著作物だと認められた場合、コンテンツの削除やアカウントの利用停止等の対応がなされます。
▪️ YouTubeの場合
動画の再生画面の「︙」もしくは「…」をタップもしくはクリックし、“報告(旗マークボタン)”の“権利の侵害”から手順を追って通報可能です。手順がよくわからないという方は、こちらリンクから申請可能です。
著作権の侵害に関する通知 - YouTube
(※Googleアカウントのログインが必要です)
▪️ Twitterの場合
ヘルプセンターから通報可能です。
ヘルプセンターは、アプリ版だと「≡」、PC版は「もっと見る」を押すと表示されます。“お問い合わせ”からフォームへと移動できます。こちらも少しわかりにくい場所にある為、直接のリンクを貼っておきます。
著作権侵害について報告する|ヘルプセンター
(※アカウントのログインが必要です。)
▪️ instagramの場合
こちらもヘルプセンターより報告が可能です。
投稿右上にある「…」より“報告する”→“不適切である”→“知的財産権の侵害”と手順を踏んでいくことで、申請フォームへとたどり着くことができます。以下のリンクから直接申請可能です。
instagramヘルプセンター
その他、TikTokとFacebookも以下のリンクより報告が可能です。
著作権侵害の報告|TikTok
著作権報告フォーム|Facebook
3. 弁護士への相談
実害を被っている場合や改善の兆候が見られない場合は弁護士に相談してみましょう。
SNSでの呼びかけも必要ですが、場合によっては加害者側へ誹謗中傷が飛び交うケースも考えられます。著作権侵害が悪質な行為であるとはいえど、新たなトラブルの発端になりかねません。そうならない為にも、まずは一度弁護士に相談し、慎重に対処しましょう。
著作権侵害にならないケースもある!
著作権者が容認している場合を除いては原則すべて著作権侵害で悪いことなのか…?
と不安になるかもしれませんが、そうではありません。
他者の著作物であっても限られた範囲内や正しい手段を取ることで使用が可能です。
私的使用のための複製
個人や家庭内で楽しむ私的使用の場合、原則、著作権の侵害とはなりません。(違法にアップロードされている画像・音源・動画の複製は私的使用であってもNGです!)
複製した音楽を家族だけで聴くのか、お店のBGMにするのか。
複製した映像を一人で見るのか、友達を集めて上映会をするのか。
など、厳密な人数などは定められていませんが、プライベートでのごく限られた範囲での使用に留めるようにしましょう。
キャラクターの利用にもこの考え方は当てはまります。
例えば自分の子どものためにキャラ弁を作るのは「私的」ですが、それを友達に売ったり、キャラ弁の作り方ブログで広告収入を得たりすると私的の範囲を超えると言えるでしょう(ケーキ屋さんが受注しているキャラケーキも、許諾がなければ著作権侵害です)。
市販されているハンドメイド用のキャラクター柄の布も、製品化して販売することを禁止されている場合はメルカリなどで売ることはできません。
なお、著作権者の意向で私的使用を禁止している場合もあります。予め利用規約や注意事項などをよく読み、場合によっては問い合わせるようにしましょう。
引用
正しい方法を取れば他者の著作物も引用可能です。
引用がダメだと言われると、論文も本や歌の感想も書けなくなってしまいますからね。
まずは引用の目的を明らかにし、自然な流れで引用を行う必要があります。
例.「感動した歌を紹介したい」という目的があり、歌詞を引用する場合
その他、5つほど注意点があるのでざっと紹介していきます。
▪️ 自身の著作物が主であること
引用する著作物は補足として使用するようにしましょう。
先ほどの歌詞の例の場合、歌詞全文を引用して「感動しました!」という言葉を添えるだけだと、コンテンツの主は歌詞になってしまいます。文章量だけで判断するわけではありませんが、自分の著作物が主、引用部分が従という関係性でなくてはなりません。
また、引用の範囲を超えている場合は「転載」となり、著作権者の許諾のない転載は著作権侵害となるので注意が必要です。
▪️ 本文と引用部分との区別
引用部分を強調させ、本文と区別する必要があります。
(例. 「」や “ ” で挟む、太字や色を変え目立たせる等)
特にWebサイトの場合は、コピペサイトだと判断されるとSEO的に問題がありますので、引用タグ(blockquote)を使った表記で統一してください。
▪️ 正確な引用
引用元の文章や画像を加工してはいけません。
文章は一言一句正確に、画像はそのままの状態で引用しましょう。
引用元に誤字脱字があるとこっそり直してあげたくなるものですが、必ずそのまま引用してください。
▪️ 引用元の明示
著作権者の名前やサイト名、URLなど、引用部分が誰の著作物かわかるようにしましょう。
▪️ 公表の有無
限られた範囲のみに公開されているコンテンツの引用はできません。
「友達限定」で公開されている友人知人のSNS投稿はもちろん、ファンクラブ限定のメルマガや有料noteなどの引用もNGです。
正しい方法で著作物を利用しよう
著作権について、被害者になった場合の対処方法や加害者にならないための注意点を解説しました。著作権は、著作権者を守るための権利です。著作権侵害は是非の線引きが難しい部分もありますが、正しい知識を持ち、規約等をよく読んだ上で適切に使用するようにしましょう。
迷ったときは、著作権者に素直に聞いてみましょう。「あなたの作品が素敵だから使わせてほしい」と問い合わせてくれる人に対して気分を害する人はいないので、常識の範囲内の依頼で、マナーを守って連絡すれば大丈夫です。