2020年2月27日に国からの要請があった全国一斉休校。
この日を境に、テレワークを決める会社も増えましたね。
弊社は社員15人ほどの小所帯であり、もともとテレワークしている社員も2名いたため、新しい働き方を全員が体験してみる機会だと捉えて3月2日から原則テレワークにすることにしました。
4月いっぱいの延長を決めた段階ですが、1ヶ月後のいま、いったん振り返ってみることにします。
ちなみに、
テレワーク=リモートワークです。
テレワークは政府や大企業が、リモートワークはIT系やベンチャー企業が使っているイメージがありますが、「同じ」という解釈で問題ないです。
テレワーク決定~1週間目まで
まずは、最初の1週間の様子を日記風にまとめます。
2月28日(金)
社長の発案により、3月2日(月)~6日(金)をテスト期間としてテレワークを始めることを決定。
- 電話は担当者を決めて転送する。
- アルバイトの方は時給制を継続しながら、固定報酬や成果報酬などベストな報酬体系を検討する。
- 平日朝10時からのwebミーティングを実施する。
当日中に決定できたのはこれくらい。
3月2日(月)
初日のweb会議はチャットワークのビデオ通話を利用。10人規模でビデオ通話にすると安定しないことがわかり、ツールについてはエンジニア職の社員が検討することに。
その他は特に滞りなし。
3月3日(火)
ビデオ通話はなしでチャットのみで会話する、という想像のナナメ上を行くスタイルでのweb会議。
しかし、発言のタイミングや返信のタイミングも難しく、20分で挫折して再びチャットワークのビデオ通話になる。
テレワーク初日の感想は、「いつもと同じ成果」「成果が上がった」という声がほとんど。
3月4日(水)
朝のweb会議は、Discordというツールでボイスチャットを試す。発言しようとしている人のマイクのアイコンが反応したり、チャット入力中もわかるので比較的スムーズ。
ただ、大人数よりも少人数での打ち合わせや雑談用に向いているという評価なので、ビデオ通話用のツールを探すことにする。
3月5日(木)
新ツールが決まっていないので、引き続きDiscordで朝のweb会議。
3日過ぎての感想を共有しあう。
- Discordで雑談ルームを作ったのでコミュニケーションは取れている。
- チャットを見逃さないようにとより注意深くなれたと思う。
- 与えられたタスクをこなす作業なので特に問題ない(アルバイトさん)。
- 経理の月次作業は集中できるので作業効率が上がっている。
と、テレワークというスタイルは非常に高評価。
新型コロナウイルス感染症の拡大も続いており、テレワークの1週間延長を決定。
但し、
- 自宅の回線が遅くて作業にならず、出勤するしかない。
という声もあり、ネット環境整備の重要性が判明した。
3月6日(金)
引き続き、Discordでの朝のweb会議。
この日は子どものいる女性社員が「今日は休んで、夫に子どもを見てもらえる土日に作業したい」と振休を取った(テレワークというよりも休校の影響だが、子どもがいると予定通りには進まない様子)。
翌週より朝のweb会議はGoogle Meet(Google Hangouts Meet)を使うことに決定。
G Suiteを契約することになるので(有料)、スケジュール管理も既存ツールを解約してのGoogleカレンダーを使うことにした。
テレワーク1ヶ月、どうだった?
2週目が終わったあとも、「いまやめる理由」がないまま延長し、1ヶ月。
弊社は名古屋ですが、東京や大阪で感染が広がっていることもあり、4月いっぱいの継続を決めました。
弊社はデスクワークのメンバーが多く、お客様には各担当者が個別対応できるため、業務に大きな支障はでていません。客先訪問や撮影など外出必須の予定があったり、回線の問題で自宅作業が難しいメンバーはいるものの、テレワークは弊社の事業と親和性が高いと言えそうです。
では実際にテレワークを体験した1ヶ月の感想を聞いてみましょう。
無記名でアンケートを取った結果、無情にも(?)半数以上が毎日のテレワークを希望。
その他も週3もしくは週4の希望で、毎日の出勤を希望したのは1名だけでした。
この1名って……?
テレワークのメリット
テレワークしてよかったことで最も多かった答えがズバリ、
通勤時間の短縮
でした。通期時間分の使い方については、
- 睡眠
- 家事
- 仕事
など、人それぞれ。
なんて意見もありました。
小さいことのようですが、こういった生活面でのストレス軽減の積み重ねは意外と価値があります。
そのほかにも、
- 情報共有を意識するようになった。
- チャットの連絡が増えたので、文章力が上がった。
- 少人数での打ち合わせをDiscordでできるので移動の手間がない。
- 1:1のコミュニケーションが密になった。
- 新しいツールの魅力を知ることができた。
などの意見がありました。
テレワークだとコミュニケーションが減りそうなイメージですが、逆にコミュニケーションの質が上がるというメリットがあるようです。
また、以前よりテレワークをしているエンジニア職の社員によると、
とのことです。
テレワークのデメリット
テレワークのデメリットについても聞いてみました。
まず挙げられたのが、
- キリのいいところまで……と思い、つい仕事をしすぎてしまう。
- キリのいいところまで……と思い、お昼ごはんの時間がズレる。
という、切り替えの難しさ。
仕事に夢中になれることや昼休みの時間に縛られないことは良い面もありますが、この状態が続くと最終的には公私の区別がつかなくなってしまいます。
テレワーク経験の長い編集者&ライターの女性社員によると
今日はここまでやる、と決めることが大事です。特に「1作業〇〇円・作業数に制限なし」という条件で仕事を受けている在宅勤務の人は要注意。1時間休む=働けば〇〇円になった、と考えてしまうので、ダラダラ仕事していると終わるタイミングがつかめず、家でくつろげなくなります。
とのことでした。
業務への支障という面では、
- 通信環境に左右される。
- いままで外付けHDDでやりとしていた大容量データの受け渡しが不便。
- パソコン操作を伴う指導がしづらい(デザインの指導など)。
- プリントアウトしたいときに困る。
- 子どもがいると予定が狂うのでかなり前倒しで進めなくてはならない。
といった点が挙げられました。
通信環境が極端に悪いメンバーにはモバイルWi-Fiを購入することにしましたが、その他はすぐには解決が難しそうなので引き続き模索します。なお、プリントアウトの目的によっては、PDF編集ソフトの導入で解決できるかもしれません(資料をチェックして部下に返したい、など)。
メリットもあったコミュニケーションにしても、
- 雑談が減る。
- 仕事で関わることの少ないメンバーとの会話がほとんどない。
- ちょっとした質問をしたいときに、忙しそうかどうかわからない。
- 雑談に近いちょっとした情報共有がしづらい。
- 寂しい。
という意見が出ました。
小規模なプロジェクト内でのコミュニケーションが濃くなる半面、ライトなコミュニケーションは取りづらくなるようです。
極端に他人と接触する機会がないため精神的にまいってくる。本来なら適度に他人と会うべきだがコロナほんま許さんからな。
インターンからそのまま入社した新入社員M。歓迎会どころか出社も無期限延期で怒り心頭です。
原本が必要な書類仕事ができない!
会社に郵便物が溜まる!
転送電話が大変!
と、総務・経理関係の担当者も大変そうでした。
日常生活に変化は?
仕事面でのメリット・デメリットをまとめてきましたが、在宅となると気になるのが日常生活への影響です。
妻との情報共有がスムーズになった!
妻が話しかけてくるから集中できない!
おっと、いきなり意見が分かれましたね。
こんなアンケートも取ってみましたが、結論を言うと……
日常生活は自分次第!
と言えそうですね。
webカメラで映すので部屋をキレイにするようになった。
という意見もありました。
どんな部屋で作業してた?
作業風景、ちょっと気になりませんか?
え?ナニコレ!
とweb会議中にみんなを驚かせたのは、さきほど怒っていた新入社員Mです。
人物の背景を変えてくれるアプリで、顔の加工もできるそうなので家ではノーメイクで過ごしたい女性にもありがたいですね。
さて、実際の作業環境の様子を覗いてみましょう。
日常生活同様、こちらも十人十色です。
以前よりテレワークのエンジニアは、超シンプル。
モノがあるのが好きではないので、雑多な資料や書類はワゴンにまとめてあるのだそうです。
体内時計をリセットするために日中は窓を開けて日光を取り込むこと。密室での生活はCO2濃度が高くなって感覚が鈍って作業効率が下がるので、常に少し窓を開けて喚起すること。電気代がかかっても、適度な湿度と温度を保ってウイルス感染を防ぐこと。
こちらも以前からテレワークの女性社員。一転、生活感あふれる状態です。
子どもがいると作業効率は落ちますが、子どもの体調や行事に左右されるストレスがないのは大きいです。外に出たくなったら、ポケットWi-Fiを持ってコインランドリーに行きます。洗濯が終わるコワーキングスペースと思えばお得です。
このかっこいい部屋は……!
テレワークになるので思い切って買いました。快適!
こちらは一転、「散らかっているほうが落ち着く派」。
同じくテレワークの妻と並んで仕事している人も。
業種もありますが、デュアルディスプレイの人が多いです。
謎の大きいクッションに乗っている人もいます。会社には持ち込みにくいサイズですね。
以下の2枚、非常にまともな印象ですが、共通点があります。
2人とも、3月末までは学生でした。
こうやって見ると、学習机っていいですね。仕事モードへの切り替えもしやすそうな気がします。
なぜテレワークが成功したのか?
まだ1ヶ月ですが、現時点では弊社のテレワークは成功していると言えます。
社員からの評価だけでなく、実際業務に支障が出るような問題や納期遅れなども起きていません。
弊社の事業との親和性の高さもあるでしょうが、理由が2つあります。
それは、
信頼関係のできているメンバーだった
まずは、これです。
よく知らない相手とボイスチャットで打ち合わせしたり雑談したりするなんて、普通はできません。テキストチャットでそっけない返事が返ってきても、お互い知っているからこそ「別に怒っているわけではない」とわかるのです。
このまま2年3年とテレワークが続き、新入社員が入社し……
となっても、いまのように円滑に進むかというと、それは大いに疑問です。
SNSでの交流に慣れている人なら別ですが、全員とはいかないでしょう。
円滑なテレワークは、やはりリアルでの関係性に支えられていると思います。
子どものいるメンバーが少なかった
家に小さな子どもがいるメンバーが1人だというのも大きいでしょう。
子どもの世話をする人が別にいたとしても、やはり子どもがいると仕事効率は下がってしまいます。
もし全員に子どもがいて休校中だったら、テレワークを継続したいかどうかのアンケート結果はきっと変わっていたと思われます。
テレワーク2ヶ月目にあたって
さて、弊社のテレワークも2ヶ月目に突入しました。
朝のwebミーティングは、Google Meetで続いています。
でも実は3月後半くらいから、ちょっとした用事を見つけて出社する人が増えました。
多い日は4人ほど出社しており、「これはテレワークと言えるのか?」という話になりました。
- 業務の都合上100%テレワークは難しい。
- 仕事は会社でしたいと考える人がいる。
おそらく、どの会社もそうでしょう。
「不要不急の出社はしない」という強い共通認識を毎日アップデートしていかないと、長引くにつれて曖昧になり、「テレワークしたい人だけがテレワークする」という状態で定着しかねません。
平常時であれば、それは会社としてベストな状態とも言えます。
しかし現在のような感染予防目的であれば、ひとりでも多くの社員がテレワークすることに意味があります。
弊社も「テレワークで作業できる人は出社しない」という原則を再度徹底し、2ヶ月目に臨みます。
今回使ったwebツール
チャットワーク(主にテキスト)
以前より使っていたチャットツール。
テキストでの連絡と、画面共有で説明したい2~3人でのビデオ通話に使っています。
無料でも使えますが、参加できるチャットグループの数に上限があります。
Discord(主にボイス)
ボイスチャットのツールです。ビデオ通話はできませんが、画面共有機能があります。
数人でのちょっとした打ち合わせに大活躍しました。顔が見えないのでテレワーク適性が高いメンバーのほうが上手に使っていた印象です。
基本使用料は無料です。
Google Meet(ビデオ)
朝のミーティングに使っていたビデオ通話ツールです。人数が多めの打ち合わせにも利用されました。
G Suiteの有料契約が必要なので、導入するならその他のサービスもGoogleに統一するほうが費用対効果が上がります。